監理指針 第7章 鉄骨工事|公共建築工事の監理に役立つチェック項目

 公共建築工事の 鉄骨工事 では、部材精度、溶接品質、接合部の管理など、構造安全性を左右する重要管理数値を確実に確認する必要があります。

 公共建築工事における鉄骨工事監理は、建築物の安全性・耐久性・品質を確保するうえで極めて重要な業務です。特に工場製作精度や現場建方精度は、完成後の構造性能に大きく影響します。

本記事では、**令和7年版『公共建築工事標準仕様書』『公共建築工事監理指針』第7章「鉄骨工事」**をもとに、監理者・監督職員・現場代理人が実務で頻繁に確認する重要数値を一覧化しました。

また、日常の工事監理で使える鉄骨工事監理チェックリストも掲載していますので、施工計画の確認や工場検査、現場検査の参考にご活用ください。

第7章 鉄骨工事


1.鉄骨工事監理における材料管理の重要数値(監理指針第7.2節)

高力ボルトのトルク係数値

トルクコントロール法で使用する高力ボルトセットのトルク係数値は、

0.10~0.17

とします(監理指針7.2.3(3)3)。

また、現場搬入時にはロットごとの品質証明書を確認し、締付試験記録を保管しておくことが重要です。


構造床用デッキプレートの板厚

構造床用デッキプレートの板厚は次のとおりです。

種類板厚
一般の場合1.0mm以上
デッキ複合スラブの場合0.8mm以上

(監理指針7.2.7(1)(c))

設計図書に特記がある場合は、承認図との整合確認も忘れずに行いましょう。


柱底均しモルタルの調合

柱脚部に使用する均しモルタルは、

セメント:砂=1:2(容積比)

とします(監理指針7.2.9(1))。

施工後の沈下や欠損を防ぐため、養生期間も十分に確保することが重要です。


無収縮モルタルの品質基準

項目基準値
ブリーディング率(練混ぜ2時間後)2.0%以下
圧縮強度(材齢3日)25N/mm²以上
圧縮強度(材齢28日)45N/mm²以上

(監理指針 表7.2.5)

ベースプレートの支持性能確保のため、試験成績書による確認が必要です。


1.鉄骨工事監理における工場製作の確認ポイント(監理指針第7.3節)

高張力鋼への打こん禁止

490N/mm²級以上の高張力鋼および曲げ加工部外側には、

たがね・ポンチ等による打こんを残してはならない

とされています(監理指針7.3.4(2))。

打こんは応力集中による疲労破壊の原因となるため、工場検査時に重点確認が必要です。


せん断切断の適用範囲

鋼板厚が

13mm以下

の場合に限り、せん断切断が可能です(監理指針7.3.5(1)(ウ))。

ただし、

  • 主要部材の自由端
  • 溶接接合部

には適用できません。


鉄筋貫通孔の最大径

鉄筋径孔径
D2538mm
D3246mm

(監理指針 表7.3.1)

設備配管やスリーブとの干渉確認も併せて行うことが重要です。


ボルト孔径の基準

高力ボルト

ねじの呼び径 d1 が27mm未満の場合

孔径=d1+2.0mm

(監理指針 表7.3.2)

普通ボルト

孔径=ねじの呼び径+0.5mm

(監理指針 表7.3.2)

アンカーボルト

孔径=ねじの呼び径+5.0mm

(監理指針 表7.3.2)


アンダーカットの許容値

アンダーカットは

0.3mm以下

とします(監理指針 表7.3.7)。

なお、

総長さが溶接長の1/10以下の場合は1.0mm以下

まで許容される場合があります。


3.鉄骨工事監理における高力ボルト接合の管理基準(監理指針第7.4節)

摩擦面のすべり係数

摩擦接合面は、

すべり係数値0.45以上

を確保できる状態とします(監理指針7.4.2(1))。

主な処理方法は以下のとおりです。

  • ミルスケール除去
  • ショットブラスト
  • 適切な赤錆発生

肌すき処理

接合部に

1mmを超える肌すき

がある場合は、

フィラープレートを挿入

します(監理指針7.4.6(2))。


勾配座金の使用基準

ボルト頭部またはナット座面が

1/20以上の勾配

を有する場合、

勾配座金を使用

します(監理指針7.4.6(3))。


高力ボルトの余長

締付後の余長は、

1山以上6山以下

とします(監理指針7.4.8(1)(a)(d))。


ナット回転法の許容差

JIS形高力ボルトでは、

  • 標準:120°
  • M12:60°

に対し、

±30°以内

を許容差とします(監理指針7.4.8(1)(イ)(a)②)。


4.鉄骨工事監理における溶接品質の管理基準(監理指針第7.6節)

入熱・パス間温度

400N級炭素鋼のCO₂溶接では、

項目基準値
入熱40kJ/cm以下
パス間温度350℃以下

(監理指針 表7.1.2)

施工時には溶接条件記録表を作成して管理しましょう。


予熱温度

400N級炭素鋼で板厚が

50mm超~75mm以下

の場合、

50℃以上

の予熱を行います。

(監理指針 表7.1.2(その5))

冬期施工では特に重要な確認項目です。


超音波探傷試験(UT)

工場溶接部のUTは、

1ロット当たり30箇所抽出

して実施します(監理指針7.6.12(1)(イ)(b)②)。

不適合発生時の追加検査方法も事前に確認しておきましょう。


5.鉄骨工事監理におけるスタッド溶接の確認事項(監理指針第7.7節)

スタッド仕上り高さ

所定高さに対して

−2mm~+2mm

とします(監理指針7.7.3(1))。


スタッドの傾き

5°以内

とします(監理指針7.7.3(2))。


アンダーカット

0.5mm以内

とします(監理指針7.7.3(4))。


打撃曲げ試験

スタッドを

15°曲げても割れが生じないこと

を確認します(監理指針7.7.6(1)(イ)(b))。

試験溶接を行ってから本施工に移行することが望ましいです。


6.鉄骨工事監理における現場建方の重要管理項目(監理指針第7.10節)

アンカーボルトの露出長

アンカーボルトは、

ナット外側に3山以上

ねじ山が出る長さとします(監理指針7.10.3(1)(イ))。


仮ボルト締付け本数

通常接合

1群のボルト数の1/3以上かつ2本以上

(監理指針7.10.5(2))

混用接合

1群のボルト数の1/2以上かつ2本以上

(監理指針7.10.5(3))

建方初日に重点確認すると手戻り防止につながります。


航空障害灯

高さ60m以上のクレーン

を使用する場合などは航空障害灯が必要となります。

施工計画段階で所轄機関との協議状況も確認しておきましょう。


鉄骨工事監理の重要数値一覧

項目基準値
トルク係数値0.10~0.17
すべり係数0.45以上
肌すき補修1mm超
勾配座金1/20以上
ボルト余長1~6山
アンダーカット0.3mm以下
スタッド傾き5°以内
スタッド高さ±2mm
予熱温度50℃以上
UT検査1ロット30箇所
アンカーボルト露出長3山以上

まとめ|鉄骨工事監理は数値管理と記録管理が品質確保の鍵

公共建築工事における鉄骨工事監理では、監理指針に定められた数値基準を理解し、計画・製作・施工・検査の各段階で継続的に確認することが重要です。

特に、高力ボルト管理・溶接品質管理・建方精度管理は、構造安全性に直結するため重点監理項目となります。また、検査時には数値だけでなく、試験成績書や品質記録、写真管理資料を整理しておくことで品質証明が容易になります。

監理者の注意点

  • 数値基準だけで合否を判断しない
  • 品質証明書類の整備状況を併せて確認する
  • 工場検査と現場検査を連続した品質管理として捉える
  • 不適合発生時の是正・再検査手順を事前に明確化する
  • 写真管理と検査記録を竣工まで一元管理する

これらを徹底することで、公共建築工事に求められる品質水準を確実に確保できます。次回は**「コンクリートブロック・ALCパネル工事の重要管理数値」**について解説します。

👉 第8章「コンクリートブロック等工事」のチェックポイントはこちら

👈 第6章「 コンクリート工事」のチェックポイントはこちら

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