鉄骨工事における「建て方(たてかた)」は、鉄骨造建築物の骨組みを組み上げる重要な工程です。建て方の品質は、建物の構造耐力や耐震性能だけでなく、外装・内装の仕上がり精度にも大きく影響します。
鉄骨工事全体の品質管理については、別記事の「鉄骨工事の監理・検査ポイント」でも詳しく解説しています。
特に鉄骨工事の建て方検査において精度不良や施工管理上の問題を見落とした場合、
- 柱・梁の建入れ不良
- 外壁・サッシの取付不良
- 内装下地の不陸
- 高力ボルト接合部の性能低下
- 溶接品質不良
- 建て方中の倒壊事故
など重大な不具合につながる可能性があります。
そのため施工管理者や監理者は、国土交通省の公共建築工事標準仕様書や、公共建築工事監理指針における各章共通事項のチェックポイント、日本建築学会のJASS6(建築工事標準仕様書・同解説 鉄骨工事)に基づき、各工程で適切な確認を実施する必要があります。
本記事では、鉄骨工事の建て方検査項目について、工程ごとに詳しく解説します。
1. 建て方前の事前準備と受入検査
鉄骨建方の品質は、建て方前の受入検査から始まっています。
建て方開始後に不具合が見つかると是正が困難になるため、事前確認が非常に重要です。
部材の搬入・受入検査
部材の外観確認
搬入された鉄骨部材について以下を確認します。
- 曲がり
- ねじれ
- 局部変形
- 傷
- 打痕
- 溶接部損傷
- 錆止め塗装の剥がれ
- 発錆
運搬中や揚重時に生じた損傷を見逃すと、建て方精度や接合精度に影響を与えるため、必要に応じて補修・修正を行います。
ミルシート・品質証明書の確認
鉄骨工事品質管理では、使用鋼材のトレーサビリティ確保も重要です。
以下を照合します。
- ミルシート
- 鋼材検査証明書
- 鉄骨工事使用鋼材等報告書
- 高力ボルト品質証明書
設計図書に指定された鋼材が使用されていることを確認します。
アンカーボルト・柱脚精度の検査
鉄骨建方検査において、アンカーボルト精度は最重要管理項目の一つです。
アンカーボルトは基礎コンクリートの施工精度と密接に関係するため、事前に「コンクリート工事の監理・検査ポイント」も確認しておくことをおすすめします。
アンカーボルトの位置・高さ・垂直度
確認項目
- 芯ずれ
- 出寸法
- 高さ
- 垂直度
- ねじ損傷
また、二重ナット締め等を行う場合は、
ナットの外側にねじ山が3山以上出ていること
を確認します。
ベースモルタルの確認
柱底均しモルタル(ベースモルタル)は荷重伝達に重要な役割を持っています。
確認項目
- 天端高さ
- 平滑性
- 厚さ
- レイタンス除去
- 目荒らし処理
特にレイタンスの除去不足は浮きや剥離の原因となるため注意が必要です。
2. 建て方作業中の安全管理と仮ボルト管理
建て方中の鉄骨は構造的に不安定な状態です。
そのため鉄骨工事施工管理では安全管理を優先して実施します。
鉄骨建方時の仮設計画や安全対策については「仮設工事における監理チェックポイント」も参考になります。
仮ボルトの締付け本数
仮ボルトには本接合ボルトと同軸径の普通ボルト等(損傷のないもの)を使用します。
高力ボルト摩擦接合
1群のボルト数の1/3以上、かつ2本以上をバランスよく配置
混用接合・併用継手
1群のボルト数の1/2以上、かつ2本以上
現場溶接(エレクションピース等)
高力ボルトを使用し、全数締付け
仮ボルト不足は建入れ不良や倒壊事故につながります。
倒壊防止対策
当日中の倒壊防止措置
以下は必ず建て方当日中に実施します。
- 筋かい設置
- ワイヤロープ設置
- 仮設ブレース設置
- 水平つなぎ設置
翌日への持越しは禁止です。
強風・悪天候時の対応
以下の場合は作業中止を検討します。
- 強風
- 降雨
- 降雪
- 雷
鉄骨建方はクレーン作業を伴うため特に重要です。
墜落・飛来落下対策
- 手すり先行工法
- 安全ネット
- 親綱
- フルハーネス
- 高所作業車
- 吊り足場
の設置状況を確認します。
3. 建入れ検査と建入れ直し
建入れ検査は鉄骨建て方精度を確認するための重要な検査です。
鉄骨工事全体の検査ポイントについては、あわせて「鉄骨工事検査チェックポイント」も確認しておくと理解が深まります。
小区画ごとの建入れ直し
- 1節ごと
- 1工区ごと
- 1フロアごと
など小区画で建入れ直しを行います。
温度・日照の影響を考慮する
測定は
- 早朝
- 同一条件下
で実施することが望ましいとされています。
建入れ精度基準
JASS6「鉄骨精度検査基準(付則6)」の許容差内
であることを確認します。
4. 高力ボルト接合の施工管理と検査
高力ボルト接合は鉄骨工事品質管理の要となります。
(数値・検査基準は現状の原稿のまま使用)
- 1mmを超える肌すきがある場合はフィラープレートを挿入
- M20:150N・m程度
- M22:150N・m程度
- 平均回転角度±30°以内
- 余長はねじ1山~6山
- 120°±30°
- 基準トルク±10%以内
5. 現場溶接の施工・検査
(数値・検査基準は現状の原稿のまま使用)
- 0℃以下
- JIS Z 3801
- JIS Z 3841
- 0.3mm以下等
- UT全数検査
建て方検査後に影響する関連工事にも注意
鉄骨工事の建て方精度は、その後に施工される仕上工事の品質にも大きく影響します。
例えば、
- 柱・梁の建入れ不良
- 鉄骨建方精度不良
が発生すると、外壁、建具、カーテンウォール、内装下地の施工にも影響が及びます。
関連する工事の監理ポイントについても理解しておくことが重要です。
まとめ|鉄骨工事の建て方検査は品質管理の最重要工程
鉄骨工事の建て方検査では、
- アンカーボルト検査
- 鉄骨建入れ検査
- 仮ボルト管理
- 高力ボルト検査
- 現場溶接検査
- UT検査
- 倒壊防止対策
を確実に実施することが重要です。
施工計画書および品質計画に基づき、各工程で自工程検査・立会検査・検査記録の整理を徹底することで、安全で高品質な鉄骨造建築物を実現できます。
また、建て方完了後は仕上工事や設備工事へ影響するため、工事全体の視点で品質管理を行うことが重要です。建築工事全体の監理実務については「現場監理の実務解説」も参考にしてください。
鉄骨工事 建て方検査チェックリスト
建て方前
□ 鉄骨部材の曲がり・ねじれ・変形がない
□ 錆止め塗装の剥がれがない
□ ミルシートと現物が一致している
□ 鉄骨工事使用鋼材等報告書を確認した
□ アンカーボルト位置を確認した
□ アンカーボルト高さを確認した
□ アンカーボルト垂直度を確認した
□ ナット外側にねじ山が3山以上出ている
□ ベースモルタル天端高さを確認した
□ レイタンス除去を確認した
建て方中
□ 仮ボルト本数が基準を満足している
□ 高力ボルト摩擦接合:1/3以上かつ2本以上
□ 混用接合:1/2以上かつ2本以上
□ エレクションピース:全数締付け
□ 筋かいを設置した
□ ワイヤロープを設置した
□ 当日中に倒壊防止処置を完了した
□ 安全ネットを設置した
□ 親綱を設置した
建入れ検査
□ 小区画ごとに建入れ直しを実施した
□ 早朝測定を行った
□ 温度補正を確認した
□ JASS6付則6の許容差内である
高力ボルト検査
□ 摩擦面に油・塗料・ゴミがない
□ 肌すき1mm超はフィラープレート挿入済
□ 一次締めを実施した
□ マーキングを実施した
□ 本締めを実施した
□ M20・M22:150N・m程度を確認した
□ トルシア形のピンテールが破断している
□ 回転角度が平均回転角度±30°以内
□ ボルト余長が1山~6山
□ JIS形は120°±30°を確認した
□ トルクコントロール法は基準トルク±10%以内
現場溶接検査
□ 気温0℃以下では施工していない
□ JIS Z 3801・JIS Z 3841資格を確認した
□ 外観検査を実施した
□ アンダーカット0.3mm以下等を確認した
□ 完全溶込み溶接部のUTを実施した
□ UT全数検査記録を保管した
□ 検査写真を整理した
□ 品質管理記録を整理した


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