0003_実務に役立つ竪穴区画

 この記事では、竪穴区画の基本と、
現場監理で迷いやすい確認ポイントを実務視点で整理しています。

・竪穴区画が必要となるケース
・吹抜け・階段・EV・DSの確認ポイント
・現場で起こりやすい不備と対処

 建築設計の実務、特に建築確認申請や現場監理において、避けては通れない非常に重要なテーマが**「防火区画」です。その中でも「竪穴区画」**は、吹抜け、階段、エレベーター(EV)の昇降路、ダクトスペース(DS)など、火災時に煙や火熱が上下階へ一気に伝わるルートを遮断するため、極めて厳格な技術的基準が課されています。

 しかし実務においては、「どの構造の建物に適用されるのか?」「ロ準耐は対象になるのか?」「シャッターに遮煙性能は必要なのか?」といった部分で、確認検査機関からの指摘や、工事施工中の不適合発覚といったトラブルが後を絶ちません。

 本記事では、建築基準法および建築基準法施行令の根拠条文に基づき、竪穴区画の基本から、間違いやすい落とし穴、設計・監理で押さえておくべきポイント、そして実務に役立つ主要な緩和規定までを徹底的に解説します!


竪穴区画の基礎知識:なぜ「竪穴」を区画するのか?

 火災において、煙やガスが上昇する速度は、人の歩行・避難速度をはるかに上回ります。建物内の上下階を貫通する「竪穴」は、火災時に巨大な煙突(スモークタワー)と化す危険性があるため、それらを防護しなければなりません。

■ 適用される「建物の要件」

竪穴区画の義務が生じるのは、以下の要件を満たす建物です。

■ 区画すべき「竪穴部分」

以下の部分(直接外気に開放された廊下等を除く)と、その他の部分との間を区画しなければなりません。

  • 階段部分、吹抜けとなっている部分
  • 昇降機(エレベーター、小荷物専用昇降機など)の昇降路の部分
  • ダクトスペース(DS)、パイプスペース(PS)その他これらに類する部分
  • 長屋又は共同住宅の住戸でその階数が二以上であるもの(メゾネット住戸内の階段など)

■ 区画の基準

区画は、準耐火構造の床若しくは壁、又は法第2条第9号の二ロに規定する防火設備で行います。

建物の用途や耐火要求を決定する全体計画の実務については、以前に解説した実務で迷わない建築基準法の全体像や、建築物の用途分類と法規制の実務を合わせてご覧ください。


【超重要】実務における最大の落とし穴:主要構造部と「ロ準耐」の判定基準

設計実務において最も間違えやすいのが、**「ロ準耐(外壁耐火構造または不燃軸組構造の準耐火建築物)」**の扱いです。

準耐火建築物には、大きく分けて以下の2つがあります。

  1. イ準耐:主要構造部を準耐火構造(法第2条第7号の2)としたもの。
  2. ロ準耐(ロ―1、ロ―2):主要構造部を準耐火構造とせず、外壁を耐火構造にしたり(ロ―1)、主要構造部を不燃材料にしたり(ロ―2)して準耐火建築物と同等の性能を持たせたもの。

建築基準法施行令第112条第11項(竪穴区画)を厳密に読み進めると、適用対象は「主要構造部を準耐火構造とした建築物…」とあります。 すなわち、主要構造部自体が準耐火構造に該当しない**「ロ準耐」の建物は、竪穴区画の対象外**となるのです!

これは実務者であれば絶対に覚えておくべき急所です。ただし、竪穴区画の対象外であっても、建築基準法第35条の3(無窓の居室等の主要構造部)の制限や、直通階段までの歩行距離など、別個の避難規定に引っかかる可能性があるので全体像を見誤らないようにしましょう。

既存ビルのリノベーションや用途変更を伴う設計では、こうした耐火要件の遡及適用の有無が大きな鍵となります。これについては、建物用途変更とリノベーションの設計実務の記事に詳しくまとめています。


防火設備の選定基準:面積区画と何が違う?「遮煙性能」と「連動方式」

竪穴区画に用いる防火設備(シャッターや防火戸)は、面積区画(令112条1項)や高層区画に使用するものとは仕様が全く異なります。この選定ミスは、確認検査での指摘や手戻りの原因として頻出します。

①「遮煙性能」が必須(令112条第19項第2号ロ)

面積区画(令112条1項)等に使用する防火シャッターは、通常の防火設備(遮炎性能20分)であればよく、原則として遮煙性能は不要です。 しかし、竪穴区画に使用する防火設備(シャッター等)は、避難上及び防火上支障のない「遮煙性能」を有する構造(昭和48年建設省告示第2564号適合品)でなければなりません!。このため、ガイドレール部への遮煙部材の設置や、スラット部の隙間対策が施された専用品を選定する必要があります。

②「煙感知器連動」の義務

面積区画であれば「熱感知器」や「温度ヒューズ」の熱で作動する自動閉鎖装置も認められますが、竪穴区画は火災初期に発生する「煙」の侵入を防ぐことが主目的です。そのため、必ず**「煙感知器(又は熱煙複合式感知器)連動」**で自動的に閉鎖・作動するシステムでなければなりません。温度ヒューズ連動(FDのみ)のシャッター等は使用不可能です。

現場での仕上・建具周りの品質管理については、建具工事の現場監理手法の記事を施工前に必ずチェックしてください。


実務でヘビロテする!「4大緩和規定」の仕組み

竪穴区画には、避難安全上の観点から、区画を免除・軽減できるいくつかの重要な緩和規定が用意されています。

① 避難階直上・直下「2層のみ」の吹抜け・階段(令112条11項第1号)

避難階(通常1階)からその直上階(2階)又は直下階(地下1階)の2層のみに通ずる吹抜けや階段等で、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げおよび下地を**「不燃材料」**で造った場合は、竪穴区画が免除されます。

  • 注意点:避難階をまたぐ「地下1階〜地上2階」のような3層にわたる吹抜け・階段は、どれだけ不燃化してもこの緩和は適用されません!

② 3階建て・延べ面積200㎡以下の住宅・メゾネット住戸(令112条11項第2号)

階数が3以下で、延べ面積が200㎡以内の**一戸建て住宅、または共同住宅・長屋の住戸内(メゾネット)**における吹抜け、階段、EV昇降路等は竪穴区画が免除されます。

③ 小規模特定建築物(ホテル・共同住宅等)の緩和(令112条13項)

3階部分をホテル、共同住宅、寄宿舎、下宿等の用途に供するもので、規模が「階数3、延べ面積200㎡未満」の建築物の場合、竪穴部分を**「間仕切壁」及び「戸(ふすま、障子等を除く)」**で簡易に区画することが認められています。

④ スプリンクラー設置による「10分間防火設備」への緩和(令112条12項ただし書)

3階を病院、診療所、児童福祉施設等(寝室があるもの)に供する「階数3、延べ面積200㎡未満」の建物において、居室や倉庫等にスプリンクラー等の自動消火設備を設けた場合、従来の防火設備に代えて、**「十分間防火設備(10分間防火設備)」**での区画が可能になります。


現場監理でのチェックポイント:配管・ダクトの貫通処理とスパンの納まり

設計図書に竪穴区画を正しく記載していても、現場監理で施工ミスが起きやすいのが**「貫通部の処理」**です。

■ 給排水配管や電線管の貫通(令112条20項、令129条の2の3第1項第7号)

竪穴区画(床・壁)を給水管、配電管、排水管などが貫通する場合、管と床・壁との隙間をモルタル等の不燃材料で完全に埋め戻さなければなりません。 また、原則として貫通部から**両側1m以内の部分を「不燃材料」**で造る必要があります(平成12年建設省告示第1422号等の材質制限に適合すること)。

  • 最新の実務情報:令和7年7月4日施行の告示改正(国住指第143号)により、硬質塩化ビニルを内管、繊維モルタルを外管とする**「耐火二層管」**による防火区画等貫通時の外径等の基準が新たに規定されましたので、最新の認定仕様を確認して施工監理を行いましょう。

■ 空調ダクト等の貫通(令112条21項、令114条5項準用)

換気・冷暖房の風道(ダクト)が竪穴区画を貫通する場合は、ダクト貫通部に**特定防火設備に該当する「防火ダンパー(ヒューズ付/煙感知器連動閉鎖式など)」**を設置しなければなりません。

  • 階段やEVシャフトに面する壁を貫通する場合は、原則として煙感知器連動の「防煙ダンパー(SD)」の設置が必要です。
  • ダクトと壁の隙間もモルタル等でしっかりと埋め、周囲の人の保守点検が容易に行えるよう、ダンパーの近傍には点検口(検査口)を必ず設けてください。

現場でのコンクリート打設や設備スリーブ・配管の埋込から仕上げ段階に至るまで、手戻りを防止するための監理手法については、各章共通の監理チェックポイントや、内装仕上工事の現場チェックリストをぜひご活用ください。


実務に直結する「竪穴区画チェックリスト」

ブログの読者の皆様が、明日からの図面チェックや現場確認に使えるリストをまとめました。

チェック項目主な根拠法令・仕様適合の可否
そもそも建物の主要構造部は準耐火構造か?主要構造部が「不燃構造(ロ準耐)」の場合は適用外
竪穴部分の防火シャッターは遮煙仕様になっているか?施行令第112条第19項第2号(昭和48年告示2564号)
シャッターの閉鎖連動方式は適切か?必ず煙感知器連動(温度ヒューズ不可)
メゾネット長屋等の住戸内階段に区画漏れはないか?3階建て・延べ200㎡超の場合は区画が必要
区画を貫通する配管等のモルタル埋め戻し指示はあるか?施行令第112条第20項・両側1mの不燃化
貫通部塩ビ管の呼び径および材質は制限内か?平成12年建設省告示第1422号に適合する厚さ・呼び径か
風道(ダクト)貫通部のダンパーに点検口はあるか?施行令第112条第21項・保守が容易に行える位置

引き渡しに向けて工事が完了する際の最終チェックのタイミングでは、竣工間際の現場チェックリストを使い、作動試験(連動シャッターが実際に閉まり、隙間や人が挟まれる危険がないか等)を必ず立ち会って確認しましょう。

しっかりとした知識と事前チェックで、法規的な不適合を撲滅し、美しく安全な建築物をつくり上げましょう!

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