第10章 石工事は、公共建築物の品格や重厚感を形成する重要な工種です。一方で、石材は重量物であり、施工不良による剥落事故は重大災害につながるため、監理者・施工管理者には監理指針で定められた数値基準の確実な確認が求められます。
本記事では、令和7年版「公共建築工事標準仕様書」「建築工事監理指針」の第10章 石工事をもとに、現場監理で特に重要となる管理数値と実務上の着眼点を整理しました。監理記録や施工計画書チェックにも活用できる内容となっています。
なお、令和7年版建築工事監理指針は、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の解説書として位置付けられています。
第10章 石工事
1節 共通事項
入隅部分の見えがかり仕上げ
- のみ込みとなる部分は、15mm以上を見えがかり部分と同程度の仕上げとする(監理指針10.1.3(2)(ア))
入隅部は完成後の見栄えに大きく影響します。特に天然石は角部の欠けや色差が目立ちやすいため、加工状態や研磨状況を施工前に現物確認しておくことが重要です。
外壁湿式工法の下地面精度
- 設計寸法に対する許容差:±15mm(監理指針 表10.1.1)
外壁乾式工法の下地面精度
- 設計寸法に対する許容差:±10mm(監理指針 表10.1.1)
内壁空積工法の下地面精度
- 設計寸法に対する許容差:±15mm(監理指針 表10.1.1)
床および階段の石張り下地面精度
- 設計寸法に対する許容差:±10mm(監理指針 表10.1.1)
石工事の品質は下地精度で大きく左右されます。躯体コンクリートの出来形が規定値を超えると、モルタル厚の不均一化や固定金物への偏荷重が発生し、ひび割れや剥離リスクの増加につながります。そのため、石材搬入前の下地測定結果の確認は最優先事項です。
2節 材料
裏込めモルタルの調合(容積比)
- セメント:砂=1:3(監理指針 表10.2.5)
敷モルタルの調合(容積比)
- セメント:砂=1:4(監理指針 表10.2.5)
張付け用ペーストの調合(容積比)
- セメント:砂=1:0(監理指針 表10.2.5)
目地モルタルの調合(容積比)
- セメント:砂=1:0.5(監理指針 表10.2.5)
モルタル調合は石材の固定性能に直結します。とくに張付け用ペーストはセメントのみで構成されるため、現場で砂の混入がないことを確認する必要があります。また、練り置き時間が長い材料は性能低下を招くため、使用時間の管理も併せて行いましょう。
3節 外壁湿式工法
石材の厚さ制限
- 適用範囲:70mm以下の石材(監理指針10.3.1)
石材の最小厚さ
- 25mm以上(監理指針10.3.2(1))
引金物用穴の位置
- 石材両端部から100mmの位置に2か所(監理指針10.3.2(2)(ア))
だぼ用穴の位置
- 石材両端部から150mmの位置に2か所(監理指針10.3.2(2)(イ))
取付け代
- 石材裏面と躯体との間隔:40mm(監理指針10.3.3(1))
流し筋工法のアンカー間隔
- 縦横ともに450mm間隔(監理指針10.3.3(2)(ア)(a))
あと施工アンカー・横筋流し工法
- 引金物取付け位置から両側100mmの位置に設置(監理指針10.3.3(2)(ア)(c))
裏込めモルタルの注入回数
- 1段につき2~3回に分けて充填(監理指針10.3.3(4)(イ))
裏込めモルタルの充填高さ
- 石材上端から30~40mm下がった位置まで(監理指針10.3.3(4)(ウ))
一般目地幅
- 6~10mm(監理指針10.3.3(5)(ア)(a))
シーリング材寸法
- 幅・深さともに6mm以上(監理指針10.3.3(5)(ア)(d))
湿式工法で発生しやすい不具合が「石材の孕み」と「位置ずれ」です。そのため裏込めモルタルの一括充填は避け、規定どおり2〜3回に分けて施工することが重要です。さらに、モルタル天端を石材上端から30〜40mm下げておくことで次段との一体化が図られ、壁全体の安定性向上につながります。
4節 内壁空積工法
石材の厚さ
- 20mm以上40mm以下を標準とする(監理指針10.4.2(1))
引金物用穴の位置
- 石材両端部から100mm(監理指針10.4.2(2)(ア))
だぼ用穴の位置
- 石材両端部から150mm(監理指針10.4.2(2)(イ))
取付け代
- 石材裏面と躯体との間隔:40mm(監理指針10.4.3(1))
だぼの差し込み深さ
- 穴深さの半分以上(15mm以上)(監理指針10.4.3(3))
空積工法は裏込めモルタルを使用しないため、引金物とだぼによる固定性能が品質を左右します。したがって、だぼ穴への接着剤充填状況や差込み長さを重点的に確認してください。施工後に確認できない部分であるため、写真管理も重要になります。
5節 外壁乾式工法
石材の最小厚さ(花こう岩等)
- 30mm以上(監理指針10.5.2(1))
石材の最小厚さ(大理石・安山岩等)
- 40mm以上(監理指針10.5.2(1))
取付け代
- 石材裏面と躯体との間隔:40mm以上(監理指針10.5.3(1))
あと施工アンカー埋込み深さ
- 呼び径の6倍以上
- かつ、特記がない場合は60mm以上(監理指針10.5.3(2)(イ))
目地幅
- 水平・垂直ともに8mm以上(監理指針10.5.3(4)(ア))
乾式工法では構造体の変形や温度変化による石材の挙動を考慮する必要があります。このため、目地幅8mm以上の確保は安全上極めて重要です。また、あと施工アンカーについては穿孔深さだけでなく、清掃状況や引抜試験結果も併せて確認すると品質確保につながります。
6節 床及び階段の石張り
石材の厚さ
- 20mm以上
- 石材面積が0.4㎡を超える場合は25mm以上 (監理指針10.6.2(1))
敷モルタル厚さ
- 30mmを標準とする(監理指針10.6.3(2))
張付け用ペースト厚さ
- 1~2mm(監理指針10.6.3(3))
一般目地幅
- 2~3mmを標準とする(監理指針10.6.3(4)(ア))
床石施工ではエフロレッセンス対策が重要です。そのため、敷モルタルの含水量管理を徹底しながら、張付け用ペーストを均一な1〜2mm厚で施工する必要があります。加えて、大判石材は不陸の影響を受けやすいため、施工中にレベル確認を頻繁に実施することが望ましいでしょう。
7節 特殊部位の石張り(天井・軒天等)
石材の厚さ
- 20mm以上30mm以下を標準とする(監理指針10.7.2(1))
石材1枚当たりの面積
- 0.4㎡以下
- かつ1辺の長さ900mm以下 (監理指針10.7.2(1))
石材1枚当たりの質量
- 25kg以下 (監理指針10.7.2(1))
天井や軒天への石張りは、万が一の落下時に重大事故へ直結します。そのため、面積・寸法・重量の基準確認を材料搬入時点で実施することが欠かせません。さらに、支持金物やファスナー類は施工完了後に確認しづらくなるため、施工中写真と立会記録を確実に残しておくことが重要です。
まとめ|石工事で監理者が必ず確認すべきポイント
石工事における品質確保の鍵は、「見える仕上がり」ではなく、「見えなくなる固定部分の数値確認」にあります。
特に以下の項目は重点管理項目です。
- 下地面精度(±10mm・±15mm)
- 石材厚さ
- 取付け代40mm
- アンカー位置・埋込み深さ
- 目地幅の確保
- 裏込めモルタルの施工方法
- 天井石材の重量・寸法制限
公共建築工事では、施工計画書に数値根拠を明記し、その数値が現場で実際に確保されていることを立会い・写真・出来形記録で証明することが重要です。令和7年版「公共建築工事標準仕様書」「建築工事監理指針」に基づく確実な監理を行うことで、剥落事故の防止と長期にわたる品質確保につながります。
次回は「第11章 タイル工事」の監理チェックポイントについて、監理指針に基づく重要数値を徹底解説します。


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